2011年2月6日

「俺と一緒に行かないか?」 ~結末が哀しすぎる映画、「2046」を観る~



 「2046」に行けば永遠の愛が見つかるのだという。
 人は、失われた愛を求めて「2046」に行くのだという。
 物語のラストで、人が、「2046」に行く本当の目的は、「失われた記憶」を求めてだと明かされる。






 「2047」は、いつか読んだ記事と一致していた。
 やはり彼の解釈は完璧だった。
 私は「2047」の存在を忘れていたのだ。
 そこは、「2046」にたどり着けなかった男の住む世界。「2046」とは別のお話だ。
 そうじゃなかった。では、「2046」の方の物語は?

 二度目の「2046」鑑賞にとても期待をしていたのだが、鑑賞後、何度考えても、考えても、「特別な意味」が見いだせなかった。
 物語を忘れるほどの前回(初めて見たとき)の印象と、まるで変わることがなかったようであった。

 あれだけの俳優陣を使って。
 まったく惜しい。






 これは、深い映画である。
 何も見つけ出せないなら、自分が馬鹿なのだ。
 そこには、深い意味がある。トニーレオンも言っていた。

 「この映画は愛とは何かを問うている」

 「2046」、「2047」、「過去と未来」、「永遠の愛」、「失われた愛」、「記憶」。
 「俺と一緒に行かないか」
 そう誘うたびに、拒否される男。
 なぜならば、彼は過去を抜け出せていないから。
 女がそれを見抜くから。
 男に引っかかるのは、それを見抜けないピュアな女だけで、その彼女は最後に深い痛手を負う。傷だらけになって「2046」を抜け出した「2047」に住む男よりもさらに深い傷を得るのだった。

 何をやっているのだか。
 「源氏物語」を彷彿されられないでもなかったが、そこには、虚無感や罪を共有した男女が辿り着くカタルシスもなく、哀しみの美学もなく、ただ不毛であった。
 大好きなトニー・レオンが、(自分でも言っていたが)本当に無礼な、嫌な男に見えたものだ。
 (まるで電車の中の痴漢男のような、厚かましさ、卑怯さ、いやらしさを感じさせられた)
 女は自分を傷つけた甲斐さえない。





 

 この、美しい映像の物語から、美しい音楽と台詞の物語から、何かを見つけ出そうと、私は深読みを何度も試みたが、先ほども言ったように、玉砕した。
 何か深いことを仄めかしてはいるのだが、観るものが感じ取れるようには描かれていないことに気が付いた。
 そのように、創られていないのだ。
 結局。

 




 物語にも、思想にも、まったく共感も出来なければ、感動も得られない。
 そこから何かの意味を見つけ出すこともできない。
 (多分監督にはあるのだろうが)
 (次回は伝わるように創ってくれることを願って)


 が、たった一つ良かった点があるとすれば。
 やはりあのもったいないほどの俳優陣。

 彼女や彼達を使うのが、監督の裁量であるならば。
 ウォン・カーウァイ監督は素晴らしい。

 役者に救われたな。
 どのシーンのどの役者の演技も素晴らしく、美しく、申し分ない見応えがあった。
 (特にチャン・ツィイーさんは最高に良かったです)

 役者達の哀しみ深い人生によって、この映画が「何ものかである」ような、「深い」印象を醸している。結末の涙を誘う。

 「俺と一緒に行かないか?」

 彼と行くものは誰もいない。
 それだけであった。






☆  ☆  ☆  ☆




 当日夜の10:00。
 まだ「2046」のことを考えている。
 なかなか解放させてくれない。
 
 久しぶりにマラソンをしたら、(ジムで走るよりも地面を蹴る感触が気持ち良かった!)思考は「2046」へと走る。
 やはり、「2047」とは別の物語ではなかったのかもしれない、と思い始めた。
 あの切り取られたエピソードがすべてだったのかもしれない。
 彼の完全な解釈が、すべてだったのかもしれない。
 女に拒否される男は、分身であるが故、ただそれだけで拒否された。
 ほかに深い理由はなかったのだと。
 時間が、男を変えるならば、現在の者は誰しも皆分身であるはずだ。
 アンドロイド(こちらも偽物)に拒否されるいわれはないようだ。もしも、分身を否定されるというならば、人は誰しも皆再生などできないではないか。どこにも辿り着けないではないか。
 男の変化が、あまりにも酷かった、痛手を負いすぎたという話なのだろうか。
 再生も出来ぬほどに。壊れ、失くしたと。

 「なぜ、戻れないの?」

 最後の、チャン・ツィイーの台詞が甦る。
 ずっと胸に残る。
 酷なラストだ。

 「列車はどこにも辿り着かない。アンドロイドは彼によく似た別の男を思いつづけ、書けなくなった主人公とともに、長い時間の中で少しずつ壊れていく」






 ウォン・カーウァイ スペシャルコレクション / 『2046』<=>『in the Mood for Love ~花様年華』
ポストカードが素敵です


 2046 オリジナル・サウンドトラック
 俳優陣に救われた、と書いたが、音楽に、と書いても良かったのかも。