2013年7月25日

TPPが破壊するもの ~序章~




 またしてもTPP絡みで驚きのニュースが舞い込んだ。

 日本郵政と米大手保険会社のアフラックが業務提携することになったという。

 なぜ驚きかといえば、日本郵政は2008年から日本生命と提携して、

 ずっとがん保険の独自開発を模索していたのである。


 がん保険などの第三分野の保険を、日本国内の生命保険会社や損害保険会社が

 取り扱うことは、米国との合意に基づいて、事実上禁止されていた。

 やっと自由化の期限が来て販売できるようになったのは2001年以降、

 が、それでも、米保険会社の商品の圧倒的な独壇場は続いていて、

 日本郵政と日本生命はその風穴を開けるために、必死で開発していたはずであった。


 米国は、日本企業が新しいがん保険の商品を出すことを拒否し続けていた。

 TPPにおける日米交渉においても、米側は4月までの事前協議において、

 「政府が出資する日本郵政グループが自由に新商品を出せば公正な競争を阻害する」

 と主張していた。


 TPPの協議事項には、ISD条項というものがある。

 国家対象投資家の紛争処理事項―

 投資家や企業が、経済連携国の国の間で投資による利益を阻害されたと感じた時に

 相手国を訴えることができる、という条項だ。

 この条約は主に法的整備がされていない発展国から企業の利益を保護することが

 目的で使われており、日本は数多くの国々とISD条項を結んでいるが訴えられたことはない。

 ただし、それは今までの話であって、自由経済圏が進むこれからの世界で

 ISD条項がどう使用(悪用)されるのかは、未知である。


 つまり、日本郵政は、投資家保護、企業保護の名目によって

 損害賠償を求められる可能性が極めて高い組織であったということだ。

 
 


日本郵政、米アフラックと提携 がん保険を共同開発
(日本経済新聞web刊 2013/7/24 23:07)

 日本郵政は米保険大手のアメリカンファミリー生命保険(アフラック)とがん保険事業で提携する。今秋以降、全国2万の郵便局でがん保険を販売するほか、アフラックと専用商品を共同開発する。従来検討してきた日本生命保険との独自商品開発は撤回する。政府が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に正式参加する中で、がん保険の凍結を求めてきた米側に配慮した。




 日本郵政はTPP参加を直前に舵を切った。

 アフラックとの提携により、日本郵政は競争力のあるアフラックの商品販売を逆手に取って、

 新たな顧客の開拓や手数料収入の拡大を目指すのだそうだ。

 収益を上げて、傘下のかんぽ生命、ゆうちょ銀行と共に早期の上場実現を目指すという。

 国の政策とは無関係の、アメリカ企業傘下の一企業に成り下がろうとしている。

 独自の商品で対決することを諦め、アフラックと提携して、

 米保険会社と共同開発した商品を売って、手数料を稼ぐ。

 もしくは、相手の人気を利用して、新たな顧客を掴む。がん保険以外の市場を確保する。

 ある意味、賢いやり方なのかもしれないが、一抹の感慨があるのは否めない。

 せめて、上場した暁に経営権を握られないように、心していただきたい

 と願うくらいである。






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