2015年1月7日

原発投下は正しかったか? 戦後70年の節目の年に。



 毎日新聞の社説が面白かったのでご紹介。

 記事を読んでいたら、子供の頃に読んだ「はだしのゲン」を思い出した。




 あの被爆者の皮膚がどろどろに溶けて、肉と一緒に垂れ下がっている姿が恐ろしかったなぁ。

 




 社説:戦後70年・広島と長崎 人類の悲劇を見据えよ

 (毎日新聞 2015年01月06日 02時30分)

 人類史上、これほど重く、苦しい70年を経験した人々が他にいるだろうか。彼らの苦しみが地球の隅々まで十分に伝わっているだろうか。

 広島と長崎で被爆した人たちのことだ。昨年の厚生労働省の統計では全国の被爆者健康手帳所持者は初めて20万人を切り、平均年齢は79歳を超えた。原爆の恐怖を体験した人が年々減っていくのは当たり前とはいえ恐ろしいことである。

 一方で、核兵器廃絶の動きは遅々として進まず、むしろ後退している印象もある。被爆という、人類が体験した悲劇を風化させてはならない。この際、被爆者の声にもう一度謙虚に耳を傾け、核兵器廃絶への道筋を改めて考えたい。高齢化する被爆者たち 広島市に事務局を置く平和首長会議は、核兵器の製造、保有、使用などを全面的に禁止する「核兵器禁止条約」を2015年までに締結し、20年までに地球上のすべての核兵器を解体することをめざしている。

 同会議には1日現在、160カ国・地域の6490都市(自治体)が加盟する。5年以内の核廃絶は絶望的とはいえ、「『20年』の目標は下ろしません」と同会議事務局長の小溝泰義さん(広島平和文化センター理事長)は言う。平均80歳近い被爆者たちが見届けられる間に、少しでも核廃絶への道筋をつけたいと願うからだ。

 広島市で「平和のためのヒロシマ通訳者グループ」(HIP)の代表を務める小倉桂子さんは今年78歳になる。爆心地から北へ2・4キロの自宅近くで被爆した彼女は閃光(せんこう)に包まれ、爆風で地面にたたきつけられた。やがて、黒い雨が降った。幽鬼のようにさまよい歩く被爆者たちは治療らしい治療も受けられぬまま、次々に息絶えていった。


 まさしく生き地獄の光景を、小倉さんは英語で外国人に証言してきた。昨年、広島で核不拡散関連の外相会合が開かれた際は各国代表の前で体験を話し、オブザーバーで参加した米国のガテマラー国務次官とも、ほぼ膝詰めで懇談した。

 「でも、仕事仲間がどんどん少なくなります。亡くなったり健康を害したり。さびしいですね。仕事も大変になる一方で……」

 そう語る小倉さんは、米国にも原爆投下に罪悪感を持つ人々がいることを知っている。広島に原爆を落としたエノラ・ゲイ(B29爆撃機)をワシントンの博物館が展示することになり、日本の代表団が03年に核廃絶の署名を携えて訪米した時だ。

 「何しに来た」と代表団をののしる人もいたが、ある会合では約30人の米側参加者が日本の代表団員たちの手を握り「ゴメンナサイ」と繰り返したという。感動的な光景だ。

 だが、オバマ大統領が09年に「核兵器なき世界」を打ち出し、核兵器を使った国の「道義的責任」に言及してからも、日本への「ゴメンナサイ」の声が米国で大きくなったとはいえない。同年と10年に行われた世論調査では共に約6割の米市民が原爆投下は正しかったと答えた。米大統領の現地訪問を 原爆が戦争終結を促し、多くの米兵らの命を救ったというのが米政府の建前だ。原爆投下は不要だったとする政治家や学者も少なくないが、米政府はいささか神話的とも見える建前を変えようとしない。

 だが、新たな取り組みが必要なことは米国も認めざるを得ないだろう。核拡散防止条約(NPT)では、核兵器を持てる5カ国(核兵器国=米英仏中露)は核軍縮に向けて誠実な交渉を行うことになっているが、米露の交渉は進まず、中国の核軍拡が取りざたされる中、インドとパキスタンに続いて北朝鮮も核兵器を保有したとみられる。イスラエルも核兵器を持つとされる。

 NPTが定める核兵器国は国連安保理常任理事国でもあり、5カ国が特権の上にあぐらをかいて核廃絶への努力を怠っていると思われてもやむをえまい。核兵器を持たぬ国(非核兵器国)が集まって核兵器国の態度を変えようという機運が高まっているのは当然の成り行きである。

 この機運の具体例が核兵器禁止条約であり、今年開かれるNPT再検討会議でも討議される可能性がある。同条約について核兵器国には冷淡な態度が目立つが、まずはオバマ政権が非核兵器国の懸念を重く受け止めるべきである。再検討会議では核廃絶につながる有意義な議論を期待したい。

  だが、何より有意義なのはオバマ大統領による広島、長崎訪問ではなかろうか。原爆投下の責任論や日米関係等々、難しい問題もあろうが、「核なき世界」への旅は被爆者に対する鎮魂から始まるはずだと私たちは主張してきた。一向に進まない核軍縮の機運を立て直すためにも、日米の新たな協調関係を築くためにも、米大統領が原爆の爆心地(グラウンド・ゼロ)を訪れることは有益である。ヒロシマ、ナガサキの現実をオバマ大統領に見てほしい。